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トリスタン・イズー物語 (岩波文庫)

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  • メーカー: 岩波書店
  • JAN/ISBN: 9784003250310
  • 定価: ¥ 735
  • 売上ランキング: 156574 位
  • ★★★★

カスタマーレビュー

正義は、強さと美しさにあり
★★★★★2005-11-14
西洋小説を読むならば押さえておかねば、ぐらいの教養的なスタンスで読み始めたのに、だんだん物語に引き込まれてしまった。(恋愛)文学は不倫からはじまった、と聞いたことがある。それがこの本を評してのことかどうか忘れたけど、トリスタンとイズーの関係は、いかにも象徴的だ。西洋人の愛が(というほどよく知らないけれど)、日本人が感じるような穏やかなものではなく、破滅、そして死をも内包しているものだということがよく分かる。だからこそ、あれほど燃え上がる。そして知らず知らずのうちに儒教道徳に則って思考する日本人にとって、トリスタンとイズーの関係は、あきらかに(王への)忠義にもとる行為であり、そこに愛こそあれ、正義などはありはしない。だから二人の不倫関係を王に忠告する四人の家臣を、本書では悪人として描いているけど、なにが悪いんだかわかりゃしない。東洋だったら、この四人は口に苦い諫言を呈する忠臣だわな。つまりは、正義は、強さと美しさにあるのだ。トリスタンは強い。イズーは美しい。だから正義なのだ。ヒーローは強い、ヒロインは美しい、だから正義なのだ。目から鱗ですね。
この作品の社会的意味
★★★★2005-10-16
 この作品を騎士道とか単なる恋愛悲劇だけで見ると、本来の中世吟詠詩として庶民に伝播され、広く愛された背景を見失ってしまうのではないでしょうか?キリスト絶対主義のもとで庶民が受け入れたものは、①お妃と臣下との不倫行為=キリスト教では絶対に認められない ②その逃げ道として利用したのが媚薬(フィルトル)=不倫に対する免罪符として ③二人の墓に絡まって再生したかのようなトリスタンとイズーの復活=復活はキリストのみ 
 というようなことが、中世ヨーロッパで広く愛され、支持された背景なのでしょう。いつの時代でも権威への反発はこんな形で静かに流布するのかもしれません。
「永遠の愛」の原点-必読の古典
★★★★★2005-08-31
ワーグナーのオペラで有名な「トリスタンとイゾルデ」。もともとはケルト伝承で、べディエというフランスの研究者が、様々な異本を比較検討して纏めたのがこの訳の底本ということだ。しかしこれは現代人が読んでも十分面白い。佐藤輝夫の訳はなかなかの名訳で、読みやすいし、格調も高い。名作と呼ばれる後世の作品の中にも、影響を見ることが出来るし、西洋的「対幻想」の原型として、一度は読んでおくべきだと思う。娯楽教養小説としてもいけるし、「指輪物語」風に映像化することも十分可能だろう。死を齎し、死後も絶えて消えることのない西洋的「永遠の愛」の原点である。
二人のイズー
★★★★2004-10-04
 この物語からは、剣や弓が空を切る、大きな音がした。
 と同時に、微かな衣擦れの音も、確かに聴こえた。 この物語には、二人のイズーが出てくる。
 黄金の髪のイズー。
 白い手のイズー。
 トリスタンは、この、二人の美しいイズーに愛される。 一人のイズーは、トリスタンと共に媚薬を飲む。.
 もう一人のイズーは、トリスタンの妻になる。 トリスタンの運命は、二人のイズーが握っている。
 そして、一人のイズーの運命は、もう一人のイズーが握っているのだ。
 
 あなたは、どちらのイズーが好きだろう?  
ケルト起源の愛の物語り
★★★★★2004-09-05
アーサー王伝説をご存知の方なら『トリスタン』は円卓の騎士としてのイメージが強いかもしれませんが、この本の『トリスタン』はケルト由来の媚薬をテーマにした騎士トリスタンと王妃イズーの恋愛物語です。(アーサー王伝説に登場する『トリスタン』と同一人物でありながら、この『トリスタン』とはまったくの別人物でもあり、その為アーサー王も円卓もでてきません)
生まれた時からその境遇に(悲しみの子)と名づけられ媚薬によって運命を狂わされ、それをわかっていながらただ彼女の心を求めた騎士トリスタン。トリスタンは他にもいろんな方の本で登場しているので読み比べるとずいぶん印象が違うのですが、この本のトリスタンはただイズーへの愛に一途で溺れるという言葉にぴったりな騎士です。思い詰めすぎてこの人には心休まる時はなかったのだろうかと思わずにはいられません。どのトリスタンも辿る運命は一緒なのですが、この本のトリスタンは全体通して孤独です。しかし最後の一行が深いんですね。孤独であっても独りで生きていた訳じゃなかった、そう思いたいです。