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遠い太鼓 (講談社文庫)

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  • メーカー: 講談社
  • JAN/ISBN: 9784061853829
  • 定価: ¥ 840
  • 売上ランキング: 3479 位
  • ★★★★

カスタマーレビュー

ランナー小説家の欧州紀行
★★☆☆☆2010-03-11
回想録のような余裕はなく、旅情をそそるといったものとも少し違う。
自分自身のために書き綴ったリアルタイムの日記という感じ。
読書欲が旺盛で、ひたすら何かを吸収したい時期には読める。
情趣ある文芸作品に触れ、その味わいを知り尽くした人にはお薦めできない。

この旅行記に限って言えば、作者は多くの言葉を用い、あらかじめイメージできる範囲を限定している。
良く言えば非常に親切で、ユニークな筆致自体を楽しめる人にとっては申し分ない。
逆に、あまり制限を受けず、必要最小限の文章から自由に想像したい人はげんなりするかもしれない。

少し急ぎ足で生きている人、止まるよりは走り続けていたいという人にお薦め。
こういうのもいいかもしれない
★★★★2010-02-25
 ギリシャ、イタリアその他を三年にわたって旅したことを綴ったエッセイです。わりとポンと投げ出すように力を抜いて書かれて、こういうあっさりしたのもいいかもしれません。
 シシリーでジョギングしているときに犬に怒鳴りつけるくだりはユーモラスであると同時にびっくりしました。この作者が怒鳴るというのは想像しがたい。
 ドイツに捕まえられた体験を「よかった」という元兵隊のイタリア人。
 クレタ島で乗ることになった飲酒運転のバス。
 ギリシャで平和活動のためにマラソン大会を開いて殺されたラブラスキという人の残したメッセージは、常人にはなかなか言えないものです。
 しかし一番心に残ったのは、「ノルウェイの森」が売れたことに対する当人の感想です。
 「すごく不思議なのだけれど、小説が十万部売れているときには、僕は多くの人に愛され、好まれ、支持されているように感じていた。でも「ノルウェイの森」を百何十万部も売ったことで、僕は自分がひどく孤独になったように感じた。そして自分が多くの人々に憎まれ嫌われているように感じた。どうしてだろう。表面的には何もかもがうまく行っているように見えたが、実際にはそれは僕にとっては精神的にいちばんきつい時期だった。いくつか嫌なこと、つまらないこともあったし、それでずいぶん気持ちも冷えこんでしまった。今になってふりかえってみればわかるのだけれど、結局のところ僕はそういう立場に立つことに向いていなかったのだろう。そういう性格でもないし、おそらくそういう器でもなかった。」
「ノルウェイの森」の頃
★★★☆☆2010-02-21
村上春樹の紀行文。
正確には紀行文ではなく、紀行エッセイ。
紀行文も紀行エッセイも同じようなものだが、村上春樹の紀行「エッセイ」には文体の「スマートさ」から離れたユーモアが感じられる。
村上春樹が1986年秋から1989年秋までの3年間を暮らした、ギリシアとイタリア。
欧州での生活を始めた初期のイタリアの文章からは、言いようもない彼の疲労が感じ取れる。
そして読む者も疲労を感じてしまう。
このままこの分厚い本を読み進めて良いのやら・・・
しかし、欧州での生活が進むにつれ彼の筆も滑らかにすべり始める。
描写にユーモアが混じり始める。
読む者も彼の生活を想像上での追体験をすることにより、楽しさを共有することになる。
あとは彼独特の文章で一気に最後まで読ませてしまう。
村上春樹ファンにとっては、彼が欧州で過ごしたこの3年間に生まれた作品に興味が向く。
彼がこの3年間に仕上げた作品は「ノルウェイの森」と「ダンス・ダンス・ダンス」。
そうか、あの頃彼は欧州にいたのだ。
正確な日時などどうでも良い。
あの作品をタイムリーに読んだ者なら、あの時代感覚は肌で覚えている。
あの作品は欧州の空気の中で書かれていた。

読む者が「一度は訪れてみたい」という感想を「抱かない」のが彼の紀行エッセイ。
しかしあとがきで書かれているが、二度と行きたくないと思いつつ、時間が経つとまた訪れてみたくなるのが彼の行った場所。
言われてみると、いつか読み返してみたくなるのも村上春樹の紀行エッセイである。
これを読んで海外へ!!
★★★★★2009-06-25
「深夜特急」を読んで海外へ出た人は多いようですが、私はこれで海外へ旅行しました。もちろん、作品中に出てくるギリシア・イタリアです。多くの部分は滞在記で、旅行と海外永住の真ん中に位置します。日本にいるようにものごとがスムーズに進まない、それがまた海外らしさと面白さをかもし出し、全て準備済みの旅行と違う魅力があることをこの本に教えられました。そして不便であっても発見の多いこんな暮らしに自然と憧れてしまいました。
これを読んだのは就職活動前で、このような経験をずっとしていきたかったので、就職してからも1カ月の休みが取れるような会社を本気で探しました。(本当にあったんです)それから、10数年・・・、私の希望は海外で大学講師になるということで実現しました。
決してガイドブックではない
★★★★★2009-05-26
ガイドブックとは、本来良い事しか書いていないもの。
異国でスリに遭った・ホテルでお湯が出ない・バスから荷物を落とされた…等々愚痴や文句は決して書かない。
旅行記にしては愚痴が多すぎる(笑)。
そういう意味では村上さんが言うようにこれはガイドブックでも旅行記でも無いですよね。

でもなぜかこの本を読むと、たまらなくその国を訪れたくなるんだろう?
なぜ繰り返し読みたくなるんだろう?

プロの作家だからこそ村上春樹だからこそ書ける最高に魅力的な『率直なひねくれ旅行記』です。
『ノルウェーの森』がベストセラーになった時に村上さん夫妻が味わった心の闇についての記述も興味深いです。

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