• 価格比較・グッズ情報

IN

の画像
  • メーカー: 集英社
  • JAN/ISBN: 9784087712988
  • 定価: ¥ 1,575
  • 売上ランキング: 66145 位
  • ★★★★

カスタマーレビュー

ターニングポイントである作品、に同意
★★★★★2010-03-10
「恋愛の抹殺」という言葉にひかれて手にとった。男女間の執心も愛憎も死によって消えもしなければ浄化もされない、ということを教えてくれた本。

『OUT』という作品に対しての『IN』なのだろうけれど、内容が対になっているわけではなく著者自身にとってのINとOUTなのだと思う。私はむしろINのほうにより心を揺さぶられたかも。個人的には非常に感銘を受けて様々なことを考えさせられたが、かなり好き嫌いの分かれる本だろうと思う。年齢層によっても好き嫌いが分かれること間違いなし。もともと好き嫌いが分かれる作家だと思うが、ファンの中でも賛否両論の作品、つまりOUT、ダーク、グロテスク、あたりの桐野作品が好きで同じものを期待して読んだ読者にとっては肩透かしを食わされた気分になるものだろうと感じた(私自身は上記3作品も好きだけれど)。

一読すると「○子」探しが特に興味深いわけでもドラマティックでもなく、○子が判明したからと言って意外でもなければわくわくするような展開があるわけでもなく平行するタマキのストーリーは私小説風味だし...なのにどうして読むものの心をここまで深く揺さぶるのだろう?
劇中作品『無垢人』において、そしてそれと平行して語られるタマキと青司のいきさつにおける現実と虚構の織り交ぜ方の巧みさ、「書くこと」に対する著者の真摯な姿勢、覚悟、気迫、けれん味の無さ、そういうものを全て力強い筆致で昇華した作品だから、と思う。

タマキに完璧に共感できなくても、主人公「タマキ」の恋人だった青司に魅力を感じなくても作者が様々な覚悟を持って書いた作品であるその真摯さに惹きつけられる。ストーリーではなくその深さ、そして、作者の筆によって揺り動かされる感情や考えにひたる作品と感じた。
『OUT』で放たれたパワーは力強く美しいけれど『IN』においてここまで自分の中に入り込みさらけ出すことは相当な苦痛を伴ったはず。それをやりとげた作者に頭が下がる思いがする。
本作を読んで今後の桐野さんの著作活動がますます楽しみになった。
三つの世界のリンク具合
★★★★2009-12-16
「OUT」に対して「IN」とは何ぞや?に構造力で答えた作品。読書量の少ない方には余りおすすめしない。通常の世界が「OUT」「IN」の二項で成立するなら、この作品には主に「IN」「IN」「IN」という三つの世界のリンク具合が描かれている。センターの「IN」に向かう著者の意欲作。構造が複雑なので娯楽というよりは、入り方や解り方に関するテーゼ。
作者の折り返し地点か
★★★★★2009-11-19
 桐野夏生の小説には、読むとすぐにそれとわかるモデル事件が存在する。
『OUT』の井の頭公園バラバラ死体遺棄事件、『グロテスク』の東電OL殺人事件、『東京島』のアナタハン事件。
 そして本作は、島尾敏雄夫妻と敏雄の作品『死の棘』、業界では誰もが知っていた作者自身のダブル不倫事件がモデルとなっている。

 現実に題材を取る作家ではあるものの、しかし桐野は現実に取材する作家ではない。
 本作の感想に、作家の取材方法がわかって面白かったと表現しているものを散見するが、桐野自身はこの手のインタビュー取材を行ってはいないのだ。島尾敏雄とミホ夫妻に対する子供側からの冷ややかな視線は、島尾伸三本人が、すでに赤裸々に綴っているところであり、桐野はそれを読んだだけであることは明らかである。
 つまり、物語の後半、劇的に真相が明かされていく過程は、娯楽小説としてのスタイルであり、桐野の創作なのだ。もちろん、彼女の不倫相手も死んではいない。
 娯楽としてのサービスが充分であり、巧いとも言えるが、甘いともいえる。

 良くも悪くも、本作は『OUT』の裏面、対になる作品であり、『OUT』が最終局面で甘く緩い方角に流れたように、また作者のデビュー作の特徴である、「主人公だけに、とっておきの秘密をべらべらと喋る初対面の相手」という女性ミステリ作家にありがちな大きな欠点も抱えており、その欠点の分量込みで、桐野の出世作『OUT』の完全な再現となっている。
(事情を知らない方が本作を『OUT』と無関係と断じているが、桐野は不倫相手と『OUT』を作ったのであり、その創作に至る道筋が本作には書かれている。)

 小説家が小説家を主人公にした小説は非常に多く、その大部分が作者の狭い世界の狭さを見せられているようで興ざめなものだが、本作は、その狭さをすさまじい深さで補い、充分に必然性のある激しい作品を作出している。

 本作は、桐野の最高傑作には絶対にならないが、次へのステップとして大きな意味がある重要な作品であることははっきりしており、読むべき一冊であることは明らかだ。
作家という生き方への覚悟
★★★☆☆2009-10-16
 主人公のタマキの小説とは何か、作家とは何かという真摯な自問自答の叫びは、
そのまま著者である桐野夏生のものとして響いてきた。また、島尾敏雄の『死の棘』
から着想を得たであろう私小説『無垢人』や、リアリティある作家と編集者の不倫の
恋の細部など、読者に敢えてタマキの物語は虚実ない交ぜの私小説ではないかと思わ
せるところからは、桐野夏生の覚悟が垣間見えた。
 タマキの名前そのままに、現実を自分というフィルターを通して虚構との間で<循
環>させ、小説をものする作家という生き方に対する覚悟だ。本作は「小説は悪魔で
すか。それとも、作家が悪魔ですか?」との作中の問いかけにイエスと答えてでも、
<たった一人で言葉の世界に取り残され>てでも、小説に命を懸けていくのだという
桐野夏生の決意表明であり、その意味では彼女のターニングポイントになる小説に間
違いない。
「○子」、は誰なのか。
★★★★★2009-10-07
桐野夏生ファンである。
追っかけて、追い続けてここまで来た。

「OUT」は外側に拡散していくような
広がりを持つ話だったように思う。
本作「IN」は初期の代表作「OUT」のアンサー作品なのかと、
軽い気持ちで手に取った。

うかつだった。

「IN」は小説そのものの構造もそうだが、
ひたすら、奥へと「分け入っていく」。
丹念に一点を見つめながら足元をひたすら掘っていくような、
一途な怖さがある。
掘れば掘るほど、自らが不安定になる、ような。

「恋愛を抹殺する」とはどういうことか。
小説家は悪魔なのか。
「小説を書く」ということの呪術的な側面と、
感情や生き方を削って「物を書くヒト」を
業深く、現代的に描きながら、
登場する様々な女たちの凄み。
この行間から立ち上ってくる禍々しい女たちの香気にもやられた。
読んでいて身震いがして、
思わずあたりを何度か見渡した。

記念碑的な作品であり、
「OUT」から今日までの彼女のある到達地点を示す作品だと思う。

俺はほんと十分楽しめた。

「○子」は本当は俺たちの中にいる。

このグッズもご一緒にいかがですか?

同じテーマからグッズを探す