蝿の王 (新潮文庫)

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  • メーカー: 新潮社
  • JAN/ISBN: 9784102146019
  • 定価: ¥ 620
  • 売上ランキング: 11558 位
  • ★★★★

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カスタマーレビュー

う〜ん。
★★☆☆☆2009-05-04
ちょっと話が飛躍しすぎでは・・・。
周りの自然の描写は細かいのですが、同様に子供たちの心の描写がもっと必要なのでは?
子供の(もしくは人間社会の)危うさを描きたかったのだと思いますが、描ききれていない印象が強い。
あと気になったのは、あまりに無説明な設定。
手っ取り早く『不自由無い自然豊かな無人島に、子供たちだけ』という状況を作りたかったのでしょうが・・・。

私は気になる点が多すぎて、ちょっとこの小説には入り込めませんでした。
「どっちがいい、法則を守って救助されるのと、狩りをしたり一切を破壊したりするのと」
★★★★★2009-04-25
子供たちの乗っていた飛行機が墜落し、孤島に放り出される。負傷者もいないが大人もいない。幸い果物が豊富で食べるものには不自由しない。ラーフは太っちょの眼鏡の少年・ピギーの手を借りながらリーダーとなり、救出を求めるために「のろし」を常にあげるよう指示する。しかし、子どもたちは悲壮感がなく、のろしの見張りすらできず自堕落にすごしている。ブタを狩ることを得意とするジャックはリーダーのラーフにライバル意識を持ち、反目する。ジャック側は顔に蛮族の化粧をほどこし、次第に獣性に目覚めて行き、ラーフに従う者を奪っていく。

「蠅の王」――悪魔ベゼルバブのことです。なにやら胡散臭そうな題目に惹かれて購入すると意外やノーベル文学賞受賞者でした。文学だよ?「ジャック」とありますが「LOST」のジャックではありません。しかし海外ドラマ「LOST」や漫画「ドラゴン・ヘッズ」が近いイメージではあります。

少年漂流記のイメージを持ちながらこの作品は健全さを一切持ち合わせていません。飛行機がなぜ墜落したのかも不明。本来ならカリスマを持つリーダ格のラーフが救助されるのを提案し、頭のよいピギーがその参謀役を務め、狩りに優れたジャックが食料を調達する――で、協力しあって過ごせたはず。しかし、そうはならなかった人間の邪悪な側面がこの作品のテーマだと思います。
島には食料が豊富にあり、温暖な島で苦労することなく生きていくことができたのが理性を失う一因だったのかもしれません。まっとうな提案をする、ただ一人物事を秩序だてて思考するピギー。彼はその容姿から嘲笑されていて、ひたすらラーフを頼りにします。ラーフはピギーの助言で「集会」を開くものの、今一つ皆の心を上手く捕えられず、いらいらしています。ジャックはリーダ役をラーフに奪われたことを妬み、豚肉で皆を魅了します。少年たちは「肉」に惹かれ、獣のように享楽的になり、ついには殺人まで起こります。

文学作品と称されますが、非常に読みやすい作品です。ただ後味のひたすら悪い作品でもあります。救出されたラーフの将来にも希望が見いだせません。ラーフはこれからも「理性的」に生きようとし、そうでない者に阻まれて苦悩しながら生きていくのです。
『十五少年漂流記』を反転させた陰画
★★★★★2009-01-06
未来の大戦中、疎開に向かう少年達を乗せた飛行機が墜落し、少年達は南太平洋の無人島に置き去りにされる。彼等は救援が来るまで自活することを決意し、共同生活を開始する・・・ここまでは19世紀の『十五少年漂流記』と一緒だが、2度の世界大戦を経て近代市民社会への幻想が打ち砕かれた20世紀においては、正反対の悲劇が展開される。

当初は法螺貝を使って秩序立った規則正しい生活を過ごしていた少年たちは、次第に堕落し、本能のままに享楽的・退廃的な毎日を送るようになる。悪魔に魅入られた者たちは蝿が群がる豚の生首を「蝿の王」(悪魔ベルセブブ)として崇め奉る。法螺貝=理性の重要性を説く少年ラーフは孤立していく(ジャックを中心とする狩猟隊が主導権を握りラーフが孤立する点は、大統領選でブリアンが射撃好きのドノファンに圧勝する『十五少年漂流記』を裏返しにしている)


少年たちは闇に潜む「獣」に脅えるが、言うまでもなく本当の「獣」は自らの内面に存在する。彼等の「内ゲバ」は凄惨の一語に尽き、人間の救い難い業を感じずにはいられない。
ドロドロを見たかったのだが…
★★☆☆☆2008-12-24
本書は「無限のリヴァイアス」や「バトル・ロワイヤル」に影響を及ぼしたと言われており、鬼頭莫宏が好きな小説としてその名を挙げている。

リヴァイアスやバトル・ロワイヤル、鬼頭作品の印象が強かったため、閉鎖空間における生存のための駆け引きや、人間が狂気に駆られていく過程の描写に期待していたが、そういう点は意外とあっさり書かれていて肩透かしを食らった。孤島での生存競争における行動や心理状態の変化を描写した作品としては、ひと昔前にテレビでやっていた「(アメリカ版)サバイバー」の方が、「蝿の王」よりも後味が悪くて面白かったように思う。

…いや、そもそも本書はそんなドロドロしたものを示すことを目的としているのではなく、少年達による冒険小説のパロディーとして、健全そうな彼らに潜む狂気(と言うか、いじめっ子気質)をより自然な形で溢れさせることに重きを置いているようなので、肩透かしを食らって評価を下げるのは勝手なのだが。

なお、登場人物は全て少年。和訳にはやや難があるように思う。
「蠅の王」――ベルゼブブとは
★★★★★2008-12-12
時は、近未来。
世界では核戦争が起こり、イギリス全土は廃墟と化した。

そんな折、イギリスから疎開する少年たちを乗せた航空機が、
南太平洋の孤島に不時着した。

豊富な食糧に恵まれた無人島は大人のいない楽園にみえたのだが……。


無人島に置き去りにされるという設定は、ヴェルヌ『十五少年漂流記』や、
バランタイン『珊瑚礁の島』、あるいはデフォー『ロビンソン・クルーソー』
などの漂流物語のフォーマットに則っています。

しかし、描かれるのは、心躍る冒険の物語ではなく、人間の内側にある
暗黒面や文明の空虚さ、そして絶望的なディスコミュニケーションです。


結末で、島での狂騒をなんとか生き延びた子ども達は、海軍士官に救助されます。
子ども達の状況を見て、イギリスの少年だったら、もっと立派にやれたはずだ、と非難する士官。


ここには、辛辣な皮肉があると思います。


なぜなら、子ども達が理性を失い、島の社会を崩壊させるずっと前から、
大人は核によって、世界全体の秩序を破壊してしまっているのですから。


子どもも大人も関係なく、内なる暗黒から目を背けてはならないのです。

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