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文明の生態史観 (中公文庫)

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  • メーカー: 中央公論社
  • JAN/ISBN: 9784122030374
  • 定価: ¥ 780
  • 売上ランキング: 3150 位
  • ★★★★

カスタマーレビュー

中洋の体感
★★★★★2009-12-25
この名著に関して今更個人的な論評を加えることなどとは思いもよらないことながら、著者の先見性に感じ入るものがあります。これが書かれたのが昭和30年代も初めの頃といえばまだまだこの国が大戦後のあの困窮の中にあって国際的にもハンディキャップとコンプレックスを抱えながらの時代であったことを思えば改めてその感を深くするものです。
2009年の夏、自分にとっては完全な空白地帯として残っていた中央アジア5カ国を僅か3週間ほどながら周遊の機会を得て、著者の言われている東洋でも西洋でもない「中洋」の世界観を身をもって体感することができたことは最大の収穫であったと思います。
中近東を含め「中洋」地域の動きこそ地球上の最大の問題となりつつある現在、これまで半世紀以上にわたってビジネスの世界で所謂欧米の各国に駐在や出張の形で接して来た私には著者の描かれた概念の先見性に改めて感服する以外の何物でもありません。
唯物史観から抜け出し、陸地の形状と気候から見た文明論
★★★★2009-08-12
 世の中にはいろいろな文明論がある。ここ100年、西洋や日本を徘徊していたのは、人類は良い方向に進歩していく、極論すれば資本主義を経て共産主義に至るといった見方と、人間は戦争をしたがる生物だとか、カネや財産がすべての行動の動機である、といった見方などか。

 この本は今では古典の部類かもしれないが、そのような唯物的な見方を一蹴し、その後の新たな文明論の先駆けとなった名著である。

 大陸の形状と気候により文明を語り、ヨーロッパ(特に英国)と日本がユーラシア大陸の反対側に在りながら同時期に対照を成すように発展した理由を説明している。大陸の形状や気候が対称であることが主原因である。だじゃれではない。

 乾燥したステップから押し出されてくる遊牧民、絶えずその遊牧民による侵略に脅かされるユーラシア大陸両端の文明、そこから海を隔てて遊牧民の害から逃れ、波状の押し寄せる文明を取り込む英国と日本、この共通項をユーラシア大陸をバサッと単純化したモデルで説明しきった著者の英断に敬意を表する。
『文明の生態史観』の素晴らしさ
★★★★★2009-01-18
梅棹忠夫氏の『文明の生態史観』と初めて出会ったときの衝撃はものすごいものがありました。世界の歴史の発展過程の法則といいますか、その仕組みがものの見事に解明してあり、まるで手品の種を見せられたような鮮やかさを感じたものです。最初に『中央公論』誌上に発表されたのが1957年2月ですので、すでに半世紀以上過ぎたことになります。

その中でも、「東南アジアの旅から‐文明の生態史観・つづき」に記載されている有名な図は、今見ても実に魅力的です。真ん中に乾燥地帯をおき、その隣にI. 中国世界、II.インド世界、III. ロシア世界、IV. 地中海・イスラーム世界をおき、その周辺に日本と西ヨーロッパを対比して置いています。そして東ヨーロッパと対角線に東南アジアを置くという実にシンプルな構図の提示がいかに新鮮に映ったことか。日本や西ヨーロッパにおいて存在した封建制のあり方と共に、その高度な文明の成熟度合いを見事に表した図だと思います。簡単な図式で文明の歴史が説明できる、とまでは梅棹氏も断言していませんが、近代化とその後の発展過程を見るにつけ、分かりやすく捉えやすい図式としては最高のものだと思っています。

20世紀に書かれた本から心に残る本、後世に残したい本のアンケート調査で、司馬遼太郎『坂の上の雲』、西田幾多郎の『善の研究』、夏目漱石『我輩は猫である』についで、本書が第4位に入ったそうです。それほど普遍的な内容を持った論考であったわけで、歴史の捉え方が50年以上支持されることに原著の魅力のほどが理解できると思います。
ユーラシア諸文明のなかの新しい日本観を築いた古典
★★★★★2007-07-17
 本書は1950-1960年代に著者がアジア諸国を調査・旅行した経験を踏まえて、ユーラシア大陸における諸文明の見取り図を実証的・生態的に描いたものだ。著者は世界における日本の位置付けを熟考し、東洋・西洋という慣習的区分を乗りこえ、ユーラシア大陸を高度な近代産業文明の段階に達した第一地域、およびそうでない第二地域とに区分する。そして、日本をユーラシア東側における唯一の第一地域として、ユーラシア西側の西欧諸国と並行的に進化してきたのだという。第一地域はその特徴として、封建制の存在と早い時期からの市場経済の発達があげられ、第二地域はその特徴として、古くから文明が栄えて専制的帝国を築いたが、封建制を発達させることなく、絶えず遊牧民による破壊的圧力にさらされ続けたことがあげられる。

 私自身の海外旅行の体験からいっても、例えば中国人とアラブ人の行動様式に多くの共通性があること、日本人と西欧人とに共通する資本主義・市場経済への適応度の高さ等、本書に納得できることは多い。また本書の図式によれば、日本人と中国人の文化的差異が、西欧人とアラブ人の違いに匹敵するほど大きいことになるが、これもよく納得できる。ただ、壮大な理論としては当然かも知れないが、複雑な世界をあまりに単純化していることや、日本人としての著者のプライドなのか、日本を過大評価する傾向が少々感じられる。しかしながら、本書は欧米先進国との比較ばかりだったそれ以前の日本論と違い、ユーラシア諸文明の中の日本文明という新しい視点を切り開いたことで、発表当時から大きな反響を呼んだことを納得することができた。
「東洋=西洋」を崩した、新しい文明観
★★★★★2007-05-24
単純な、「東洋=西洋」の文明観を否定し、筆者は間に「中洋」を設ける。
さらに、「西ヨーロッパ」と「日本」をそれぞれ1ブロックとして扱い、それを第1地域、残りを第2地域とする。
筆者の言うように、アジア地域よりも西ヨーロッパに、日本は多くの共通点を見出せる。

とりあえず、楕円で書かれたユーラシア大陸の区分図はすごいと思った。
左右の端っこに西ヨーロッパと日本、大陸を斜めに乾燥地帯が走って、中国、インド、ロシア、中東・地中海、の4ブロックに真中を分ける。
その後筆者は東南アジアと東ヨーロッパを導入するが、地図帳を見てみて、その正確な区分に驚いた。


本書は短編集のような構成で、軽く読めます。
生態史観以外にも、アジアの面白い風習や文化などもいろいろと書かれていて、そうしたところも楽しめる本です。

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