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私たちの隣人、レイモンド・カーヴァー (村上春樹翻訳ライブラリー)

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  • メーカー: 中央公論新社
  • JAN/ISBN: 9784124035148
  • 定価: ¥ 1,260
  • 売上ランキング: 166104 位
  • ★★★★

カスタマーレビュー

カーヴァーの友人・知人が彼について語る極めて思慮深い優れたエッセイ集
★★★★★2009-05-27
序文で村上さんも引用した本書収録のW・キトリッジの次の言葉がカーヴァーの偉大さを端的に物語っています。

「レイの最良の作品は、自分が如何に狼狽している時でも、何とか他人に暖かくまっとうであり続けようとする試みの必要性を示唆している。それらは有用性という点で傑出している。他人であるということがどういうことかを我々に想像させてくれるのだ」

カーヴァーとの親密度に差異はあれど、彼の作品と人柄を愛して止まない9人が彼への想いや思い出を綴った、非常に思慮深く示唆に富んだ、極めて文学的価値の高い素晴らしいエッセイ集だと思います。

多くの言葉が印象に残る中、個人的には、取分けやはりW・キトリッジが癌を抱えたカーヴァーを「慈しむべくあるものを慈しむことで自らを保ち、その一瞬一瞬を生きつつ、それに固執しない、そんな奥義のようなものをレイは会得していた」と語ったのが強く印象的に残りました。

それは私が巧く言葉に出来なかった亡き父の姿であり、また、かつてカーヴァーが講師をしたUCサンタクルーズ校との自らの出会いと同様、何か重要なシンクロニシティを感じさせたのでした。
文学と愛の夢に殉じたレイモンド・カーヴァー
★★★☆☆2009-05-04

「黄金週間」とはよく言ったものだ。

僕たちはゆっくりと朝寝して、ブランチを食べたあとで近所の公園や遊園地まで散歩に出かけたりする。ベンチに座って深呼吸すればまぶしいほどの新緑に包まれた樹木が太陽に向かってすべての腕を伸ばしていることに気がつく。

青い空に浮かんだうすい絹のような雲が西から東に向かってゆっくり流れていくのが見える。僕たちはその瞬間毎日心身をはげしく苛んでいる仕事のことも、複雑怪奇な人間関係のこともすっかり忘れて、子供の時には喜びの声を上げて流れていた純粋な時間と透明な空間をちらりと覗いたような錯覚に陥る。

ああ、労働と義務から解除されたあの夢のような世界にもう一度戻ることができたなら!

それが到底不可能と知りつつも、「本来そうであるべきであったところの自分」をもしかすると復元できるかもしれないという美しい幻想にとらえられる、おそらく年にただ一度の黄金の時の時なのである。

朝比奈峠からの散歩を終えた僕は、FMから流れるラ・フォル・ジュルネのバッハの演奏を聴きながら、村上春樹が編んだ「私たちの隣人を、レイモンド・カーヴァー」という短編を読み終えたところだ。

カーヴァーは底なしの酒飲みで、その致命的な欠陥によって人生を台無しにするところだったが、彼のどうしても詩を、小説を書かずにはいられないという執念、そしてたった一人の女性への愛がその破滅的な人生をぎりぎりのところで救った。

たった50年という短すぎた生涯ではあったけれど、それでも晩年のつかのまの幸福とあれほど見事な作品をもたらしたのは、カーヴァーという不器用な男の文学と女性への献身があればこそだった。 

文学と愛の夢に殉じた“私たちの隣人レイモンド・カーヴァー”は、「労働と義務から解除されたあの夢のような世界」にいつまでもいて、僕たちの訪れを待っているのだろう。
Days with Ray
★★★★2009-03-12
これだけまとまってレイの思い出に浸れることにまず感謝したい。
今まで色々な本に書かれたレイとの日々がまとまったのだ。
ひっそりと、そして確実に私たちの心をとられたのがレイだった。
大作家ではないのかもしれないけれども、確実に心をとらえて放さない作家なのだ。