
この難問を解決したアンドリュー・ワイルズにとっても、決して平坦な道ではなかった。7年間にわたり友人や家族との交わりを断ち、独房のような屋根裏部屋へ閉じこもり、ひたすらこの問題を考え続けたのだ。そしてある日、ついに最終的な決着をもたらす刹那が到来する。彼は1993年6月、ケンブリッジ大学での講演で最終決着したことを発表。苦労は労われたかのように見えた。
だが、彼の証明には穴があった。失意の中、彼は再び屋根裏部屋へ閉じこもった。1年にわたる格闘にもかかわらず、穴はふさがらない。彼はついにその証明を放棄しようと決心し、研究で散らばった書類を片付け始めた。1994年9月19日の朝である。彼は机に向かい、あらためてなぜ自分が失敗したのかを熟考した。そして、彼に真の解決の刹那が訪れたのだった。
著者アミール・D・アクゼルは数学者である。著述は関係する数学者への直接取材と文献がもとになっており、臨場感に富むが客観的であり、おもしろおかしく仕立てているわけではない。また、一方でフェルマーの最終定理をについて数学史的観点からかなり本格的に紹介している。(別役 匝)
フェルマーの大定理が解けた!―オイラーからワイルズの証明まで (ブルーバックス)
偉大な数学者たち (ちくま学芸文庫)
数学をつくった人びと〈1〉 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)