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漆の実のみのる国〈上〉 (文春文庫)

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  • メーカー: 文藝春秋
  • JAN/ISBN: 9784167192327
  • 定価: ¥ 540
  • 売上ランキング: 123685 位
  • ★★★★

カスタマーレビュー

民を思い泣く政治家が今何人いるだろう?
★★★★2009-12-20
 上杉鷹山の名前は知っていたが、「財政難の米沢藩を改革した人」という程度の認識だった。
 経営者が尊敬する歴史上の人物として知られている人物だが、自分としてはあえて知る必要はないと思っていた。
 しかし、最近の日本を含めた世界を見ていて「今の日本に必要なことは何だろう?」と思い、その時に上杉鷹山と本作が頭に浮かんだので読んでみた。
 
 すぐに藩主の状態から始まると思っていたが、上巻はほとんど子供時代で鷹山自身は出てこない。
 上巻は、米沢藩が貧しくなってしまった原因、前藩主を隠居に追い込むまでが中心に描かれている。
 その中で印象に残ったのは、直丸(鷹山)のあるシーン。

 直丸が米沢藩の歴史についての講義を受けている時、『人別銭』という「希代の悪税」とわれる税金についての話がでたとき、なにを思ったか急に泣き出した。
 教師の松伯がなぜ泣いているのかを問いただしたところ、直丸は「すまぬ、しかしそれでは家中・領民があまりにもあわれである」と話した。

 このシーンを読んだとき脳を揺らされた感覚がした。
 今の日本に国民を思い、泣く政治家が何人いるだろうか。またそんな人間が何人いるだろう。
 おそらく片手で数えるほど、もしかしたらいないかもしれない。
 ここで注意しなければいけないのはこの時の直丸が12歳だったということ。
 つまり、立場などは関係ないということ。
 だからさっきの質問に「いや自分はまだ下っ端だから」とか「そんなのは自分で意見が言える立場になってからだ」とは言えない。
 
 今の日本人に欠けているものは「立場やしがらみなどに左右されない」ことだと思う。
 これは政治家であるかどうかは関係ない。すべての人に共通することだ。
 まずそのためにまず、「泣く」「悲しむ」「憂う」ということだと思う。
上杉鷹山に抱くイメージが変わった
★★★★2009-09-10
上杉鷹山の「埋み火」の逸話とともに、藩政改革・藩財政の立て直しは速やかに短期間で実施され成功したというイメージを勝手に抱いていた。
治憲(鷹山)の事績は、上杉家に養子として入り、藩主を引き継いだ後、格式・階級意識の強い文化にとらわれた貧窮小藩の財政立て直しに、半ば失敗の連続を重ねながら粘り強く超長期間にわたって取り組んで行った結果なのだという事実をこの小説で初めて知った。著者はその軌跡を延々と描写し、治憲の問題意識と分析視点、その想いを淡々と述べている。地に足のついた鷹山像を心に残すことができ、読み終えた今、その読み応えを感じている。
藩主と執政の関わり方並びに、藩主を支える執政の様々な努力とその試行錯誤、現実・現場主義、これらは形を変え、企業経営の内部でも発生しているのではなかろうか。
人材の育成とビジョンの確立、実行可能性のある計画と実行力、文化風土と人の意識に対する改革思想の対立など、学ぶべき切り口が多い。時代は変わっても、歴史はここに繰り返されているという想いを深めた。
期待はずれ
★★☆☆☆2009-06-04
海坂藩的な作品を期待するなら読まない方がよい。何と言っても藤沢作品は、庶民や下級武士の何気ない生活やちょっとしたイベントから派生する出来事の顛末に余韻の残し方が非常に上手いのだが、本作品は最晩年のせいかそのような息吹は全く感じられない。ことあるごとに史実に忠実であろうとする作者の正義感が働くためか、文章に一貫性がなくストーリーが唐突気味に進んでいく感が否めない。
やはり、名も無い庶民の中にこそ藤沢作品の生きる道があると痛切に感じさせられた。
★★★★2008-03-31
上杉鷹山に関する小説です。関ヶ原前後からの上杉家の動向など詳しい背景の説明があり理解が深まって満足しました。
具体的に、会津から米沢への転封後石高が大幅に削られたのにも関わらず、
家臣の数をほとんど減らさずに抱えてきたために、またその他諸事情により藩経営が窮地の状態であるという事などです。
役職名の列挙などやや詳しすぎて冗長になってしまっている点もありますが、
背景が分かってこそ現在の状況の深刻さが窺えると感じ、他の鷹山の小説を読んだ時に何となく釈然としなかった気持ちが晴れたような気がします。
側近と鷹山の幾多の苦労がなかなか報われず、さあ今度こそ、というところで残念ながら話が終わっていますが心に残る素晴らしい作品だと思います。
著者最後の作品ですから 心して読みました
★★★★★2008-03-30
ここでまさかこの歌に出合うとは全く予想しておらず、びっくりした。思わず本の角を折りました。

「為せば成る 為さねば成らぬ何事も 成らぬは人の為さぬなりけり」
上杉治憲の信念を託した和歌(藩主引退後の号:鷹山)

藤原周平さん69歳、この作品が最後となり1997年1月亡くなりました。残りの原稿40枚に対し、体力が持たず書斎にあがる力も無い中、食卓で6枚を書き上げた遺品長編小説。

貧困に喘ぐ米沢藩。藩主の代替り、執政達による改革、それに立ち塞がる旧体制の重臣。
上杉治憲、藁科松伯、竹俣当綱、莅戸善政らの藩財政再建の物語。

非常に充実した内容で満足しました。やはり最後の最後、原稿6枚分には思うものがありました。また、人間としてサラリーマンとして、「歴史に学ぶ」ことはあるのですね。私 こういうの大嫌いですから避けていましたが、非常に勉強に、ためになった作品でした。

■ 参考までにウンチクを:
現代では上杉鷹山の和歌の方が馴染みがあるが元々は武田信玄の名言をコピーしたもの。
武田信玄の名言「為せば成る、為さねば成らぬ。成る業を成らぬと捨つる人のはかなさ」を変えて言ったものとされる。また、「してみせて 言って聞かせて させてみる」の言葉を残しており、山本五十六も信玄の影響を受けたとされる(*私、知りませんでした、てっきり山本五十六の言葉と思っていました。)。

■ カウントダウン藤沢周平:
藤沢作品の中で私がもっと嫌いとする「歴史&政治」の事実物語りの為、読むのを遅らせていた。上・下本の為、気合をいれ読み始めると、以外や以外スラスラと行き、面白く ついつい寝る間も惜しんで読んだ。「寝る間を惜しむ」とはまさにこのことを言うのだな?と実感しながら。。
そうこうしながら、この本の先駆をなした同著者中編小説が20年前に書かれていたと知り、既にその本を読んでいる。文春文庫「逆軍の旗」のなかの「幻にあらず」。
「食わず嫌い」とはこのことか?まー、藤沢作品ですから安心の上で読んでいますからね

■お薦め度:★★★★★
歴史人物が苦手な人でもOKです。落ち着いてゆっくり読めます。また、藤沢周平最後の作品ですから藤原ファンは是非読みたいところ。

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