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故郷忘じがたく候 (文春文庫)
メーカー: 文藝春秋
JAN/ISBN: 9784167663148
定価: ¥ 500
売上ランキング: 110917 位
★★★★
☆
カスタマーレビュー
標題作は重厚過ぎる位重厚な歴史を語る秀作
★★★★★
2009-02-14
何よりも、標題作が素晴しい。
司馬氏は、恐らく当初は小説にするために取材を行ったように思います。
取材での14代沈寿官氏その人との邂逅、触れ合い、そして沈氏一族に課せられた
その重厚過ぎる歴史を感じ、小説というものでは表現しきれない、と思われたの
ではないでしょうか。何の脚色もいらない、この見聞した事実だけを記すだけで、
十分すぎるくらい・・・・・そのため、このような聞き書き、随想の体裁で、ただただ
事実のみを語ったのではないか、筆者はそう感じました。
沈氏の朴訥とした人柄の描写、口述を通じて、300有余年の長大な歴史を
あくまでも淡々と記されつつ、読み手の心を揺さぶる筆致(恐らく、司馬氏ご自身
が、誰よりも心をつき動かされたのだと思います)は、流石の一言に尽きます。
筆者を含めて、何の疑問も持たずに大きくなった、日本人全てにお勧めしたい逸品
だと思います。
江戸幕府倒壊前夜の混乱時の、ある意味のどかとしか言いようのない東北の出来事を
しるした「斬殺」は、街道をゆく〈26〉嵯峨散歩、仙台・石巻 (朝日文庫)の仙台の随想を
読まれれば、更に理解が深まるかもしれません。
細川ガラシャの「悲運」の生涯を綴った小品、「胡桃に酒」も、小説としての技巧にも
すぐれた逸品。筆者は細川ガラシャは名前しか知りませんでしたが、戦国の世の無常に
最後は切なく拝読いたしました。
表題作はつまらない、だが他2作が秀逸
★★★★
☆
2008-09-23
表題作は、著者の持って回った独特の臭気があって嫌い。もっと単刀直入に、歴史的事実に迫れば良いのに、なかばエセー的な書き振りがよくない。「惨殺」「胡桃に酒」は、秀逸で、とくに、「惨殺」は維新直後の動乱の東北が舞台。情報に疎い地域だけに、なんとなく、時流に乗れず、今から見ると頓珍漢なのだが、「中世の秋」ではないが、維新前後を「近代化」の視点から手繰り寄せるように見るのは一面的で、当時は、十分に「江戸時代の秋」だったのだと思う。その動乱期に、長州出身の2番手の人物が孤軍奮闘、性格的な欠陥が及ぼして、努力が報われず崩壊していく様が悲喜劇なのだが、一方で、寝ぼけたような伊達藩の連中のそれなりの陰険さもリアリティがある。新政府か佐幕かで東北各藩が割れて、なかには「城が落ちる」という時代錯誤的な素っ頓狂な事実まで記載されているのが興味深い。ガラシャを描いた「胡桃に酒」は少し出来すぎだが、何も言うことは無い短編。
運命に翻弄
★★★★
☆
2008-09-14
表題作の「故郷忘じがたく候」は朝鮮の役で島津に連行された朝鮮人の陶芸職人沈寿官の一族の悲哀を、小説というより筆者の取材のような形で描いています。
話に出てくる14代沈寿官氏の写真を検索してみると、人の好さのにじみ出たご尊顔を拝む事が出来ます。
そもそも焼物の知識が全く無いのですが、こういった作品を通して歴史を踏まえて新しい事を知ることが出来たのはよい事だと思いました。
次の「惨殺」は戊辰戦争で奥州に遠征した官軍の参謀に任ぜられた長州のある人物の悲惨な結末を描いています。
奥羽越列藩同盟という言葉自体はしばしば聞きますが、この頃の、伊達政宗を祖に持つ仙台藩や上杉謙信を祖に持つ米沢藩といった往年の名藩の顛末を知らなかったのでそういう点で楽しめました。
もっとも、顛末とは言いましたが藩の最後までは語られず、主人公の死を最後にして短編は終了しています。
最後の「胡桃に酒」は細川ガラシャの輿入れからその一生の最期までを描いています。
戦国期を通してもガラシャとその夫、細川忠興はそれぞれ特異な性質を持つ人物として色々な話があって有名ですが、
「胡桃と酒」という食い合わせの悪さを自身の夫婦間の関係になぞらえてガラシャが叫ぶ場面は悲運な生活を送っている中にも、
その見事な最期からも窺えるように、日ごろから秘めていた悲壮な決意の顕れを目にしたような印象を受けました。
自身の子供を除いて、父や親類の尽くを処刑されてしまうなど、この人物に対しては「悲劇の女性」という言葉を用いても何ら脚色や遜色など無い女性と言えるのではないでしょうか。
感動しました
★★★★★
2008-06-15
戦国武将の話ではなく、明治維新の話でも
ありません。
島津家に連れてこられた朝鮮の陶工の子孫の
お話です。
派手さはありませんが、時代を越えて
故郷を忘れない彼らの生き方に感動します。
さすが司馬遼太郎
★★★★
☆
2007-01-03
3つの短編が含まれる。
なかなか面白いですね。特に、標題になっている最初のもの。
16世紀末に鹿児島に土着した(させられた。。。薩摩軍によって拉致された)朝鮮半島の人々の話は、なかなか骨太で良かった。
一度この地に行ってみなければと思った。
最後の、「胡桃に酒」は細川ガラシャを扱ったものだけど、これはきつかった。
あまりに美しい人が、異常に嫉妬深い人間に嫁いだなんて言うのがそもそも悲劇なら、そこに部下の女房だろうがなんだろうが歯止めなく手を出す、関白秀吉が絡んでは。。。
いやぁ、これはなかなか鬼気迫る話やったぁ。
なかなか重厚な、さすが司馬遼太郎、そんな一冊でした。
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