オン・ザ・ロード (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-1)

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  • メーカー: 河出書房新社
  • JAN/ISBN: 9784309709413
  • 定価: ¥ 2,730
  • 売上ランキング: 35293 位
  • ★★★★★

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カスタマーレビュー

近代におけるジブン探し
★★★★★2009-07-05
“地下街の人々”は読んだことあったんだけど、そんなにピンと来るものがなかった私にも“on the road”は別格!!
新訳と読むコンディションがハマっただけではない、胸に迫るものが。読み始めてすぐの面白みと読後に浸る感慨の距離や、移動という概念についてや、何気ない会話にまで及ぶ。このかき混ぜ方。ぐるぐるします。
非生産的なドライブ
★★★★★2008-07-21
「路上と訳してしまっては何か大事なものが欠けてしまう…動く感じがないのだ…『オン・ザ・ロード』は『路上』をどこかへの『途上』と信じてひたすら移動を続ける若い連中の話」
と紹介の冒頭に書いていました。そのとおりのストーリーが展開します。

この本を読んでいて、頭の中に映るのは、アメリカのハイウエイ。何百キロと同じ荒涼とした景色が続く。ハンドルを握りアクセルを踏む。時間とガソリンを道端に捨てる移動。長距離トラックの運ちゃんでもないかぎり、無駄な時間だ。非生産的というか。

でも、人生をふりかえってみると、この時間が大切な記憶として刻まれてしまう(そういうことってみんなありますよね?)。

この小説も非生産的なドライブみたい。ストーリーにハリウッド映画的なドラマ性はない。しかし、ひとつひとつの挿話が胸に脳に刻まれてしまう。印象的なシーンをひとつ。

サルは身勝手なディーンとディーンの元妻メリールウといっしょにサンフランシスコに来る。三人で共同生活をしようとしたのだ。ニューヨークからの長旅でお金を使い果たしたところで、ジェーンは現妻のところに行ってしまう。

「唐突にジェーンがじゃあなと言った…「どんなロクデナシか分かった?」メリールウが言った。「どんなに寒いところだろうが置いてけぼりにしていくのよ、自分の都合で」「分かってる」もくはいいえ、東のほうを振り向いて溜息をついた」

それでも、彼らはディーンを許してしまう。なぜ許せてしまうのか。その何故?がこの小説がアメリカ人に愛されている理由ですね。
毎日が退屈な方へ、そして、毎日がつらい方へ
★★★★★2008-05-22
旧訳が悪いとは申しません。
ドラッグを美化する気もございません。
この本が素晴らしいのは、その瑞々しさであり、語り手のきれいな口であり、素晴らしい翻訳であり・・・毎日を、ただなんとなく生きている方に、手を差し伸べてくれる・・・そういう点だけではないのですが・・・日々に退屈を感じている、我々にとって、とても素敵な物語である・・・到底、私のボキャブラリーでは語りつくせない魅力があるのです。
ただ勘違いしないでください。決して本書は、怠惰に生きている人間たちのだらしなさをつづったものでもなければ、オカルトめいた、オルタナティヴ・ファンタジーでもないのです。
本書では、登場人物たちに、厳しい現実が襲いかかってきます。そんな状況でも、つねに希望を持って、日々を生き、放浪を続ける人間たちの姿には、とても元気づけられるでしょう。
話は変わりますが、私はこれを読んでいて、ボブ・ディランの「ミスター・タンブリング・マン」を思い出しました。ディランのこの曲にも、厳しく、ときには退屈な現実と向かい合い、生きていく人間たちの姿が歌われていました。
私が初めて読んだのは旧訳のほうなのですが、やはり素晴らしいと感じました。そして新訳を手に取ったわけですが・・・いやあ、素敵だなあ。すらすら読めてしまうのです。
「ビート・ジェネレーションを代表する一冊」というくくりで捉える方にも、そうでない方にも、是非お勧めできます。
とにかく、読んでください。私のこんなレヴューなど、読んだあとには、きれいさっぱり忘れてしまうでしょうから。年月を重ねても、心に若さを忘れていない方に、感じてもらいたい。「オン・ザ・ロード」は永遠です。100年経っても、語り継がれていく書物です。
ジャック・ケルアックには、もっと長生きして、もっと本を書いて欲しかったなあ。ウィリアム・バロウズだって、83歳まで生きたのだから・・・私のこんな愚痴など、忘れてください。
ハチャメチャな行動の裏側
★★★★★2008-02-09
フランシス・フォード・コッポラが、十年来、映画化しようとしているが、確固たる脚本が得られず実現できていない作品です。

五部構成からなるこの作品の第一部から第四部までは、それぞれアメリカを横断、縦断する語り手サルとディーンの放浪の物語です。

それは、「退屈な知識人」による既存の価値観に対する反攻の物語です。
安住の地を求めず、その時々の刹那的な「幸福」を求めての旅です。彼らは、街に行き着く度毎に馬鹿騒ぎをし、場合によっては、不法な事も構うことはありません。酒、薬、女、そして激しい音楽が、彼らを徹底的に乗せるのです。

サルは、ディーンを崇拝しています。ディーンは、時に狂気を示し、迷惑をかけます。それでも惹かれてゆく何かが、ディーンにはあります。
この本の中には「ヒップスター」と言う言葉が、頻繁に登場します。この意味は、「正業につかず、なにをやっているんだかよくわからない、ぶらぶら遊んでいるやつ」と言うことだそうです。でもサルは彼にそれ以上のものを見ているのでしょう。
それは、既存のものからの独立性なのかも知れません。そうした状況で生きてゆく勇気なのかも知れません。或いは、時代を先取りした先験的な生き方を見ていたのかも知れません。

訳者によると、「鋭い語感」が作者の特徴だそうです。表面的な意味と、その裏側にある意味とを巧みに使いこなしていると言うことです。
この物語を読んでいると、物語自身が表面的な物語の裏に何があるかが問題なような気がします。彼らのハチャメチャな行動の裏に何を感じ取るかが大切なのかも知れません。
河出書房の英断に拍手
★★★★★2008-01-14
河出書房新社の創業120周年記念として企画された「世界文学全集」。その第一回配本の名に恥じない名作です。
作品には作者のケルアックのみならず、ウイリアム・バロウズやアレン・ギンズバーグなどなど、ビートゼネレーションを代表する作家たちがモデルとなって登場し、作品世界を走り抜けます。
旧訳も悪くはないですが、新訳が本当に魅力的で、内容の薄い昨今のベストセラー作品とは全く違った深くて忘れがたい読書体験を下支えします。
世界文学全集は商売にならないということでどの出版社も二の足をふんでいましたが、やはり老舗がやってくれました。河出書房新社の英断にも拍手したいです。

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