とにかくもう、曲のラインナップを突きつけられた時点で僕の負けでした。『cross road』『innocent world』『tomorrow never knows』がいつの日もこの胸に流れていた中学校時代。人生という『終わりなき旅』を憂い、ひとり『口笛』を吹きながら帰り道を歩いた高校時代。人間関係も面倒臭くなり、様々な嘘と付き合いながら生活する中で、「そのすべてが真実」と『Any』が優しく慰めてくれた大学時代。社会人になり、仕事に追われる「なんてことのない」日々にそっと「温かなピンク」を引いてくれた『彩り』。ここまで僕の日常に寄り添ってくれた音楽は、ミスチル以外にありません。完全に僕の負けです。
「ポップ」とは、時代と寝ることを宿命づけられた音楽のことを言います。曲は生まれた瞬間に親元から離れ、自分が生まれたその時代を精一杯に生き抜いて、儚く時代に散り、眠りにつくのです。その意味で、90〜00年代は、音楽史上でも類を見ないほどたくさんの「懐メロ」が生まれてるよなぁ、なんて思ったりします。
しかし、ミスチルの名曲の数々は、「何度でも何度でも生まれ変わって」きました。日々降り積もる時代の地層に押しつぶされることもなく、この15年余、常に名曲たちは「蘇生」し続けてきました。そう、ミスチル自身の手によって。この映像で聴く『cross road』や『tomorrow never knows』は、桜井和寿の「うた」自体の成長により「蘇生」されたいい例だし、ほぼオリジナルアレンジのまま演奏された『sign』『しるし』も、「その瞬間」のメンバーの演奏によって「熟成」された響きを得ています。